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PARAが好き

やりたいことはあるのに、うまくプロジェクトにならない。なんとかするために締切や成果物を無理やり設定してみる。でもやらなきゃっていう義務感が生じるばかりで楽しくない。結局やめてしまう。

少し前からそういうサイクルに入りかけていたんだけど、PARAっていう情報整理術みたいなやつを知って、結構よくなった。そういうわけで、PARAや周辺の議論を紹介したうえで、そのメリットというか使用前使用後的な感想を書いてみる。

PARAとはなにか

PARAは、ティアゴ・フォルテ(たぶん自己啓発書をいっぱい書いてる的な人だと思われる)が生み出した情報整理のメソッドだ。ざっくりいうと、取り入れる情報を「プロジェクト」、「エリア」、「リソース」、「アーカイブ」の4つに分類するというもの。興味があれば、彼の書いたThe PARA Methodや『SECOND BRAIN(セカンドブレイン)』(KADOKAWA、2023年)を読んでもいいかも。

とりあえず4つのカテゴリを紹介すると、それぞれ次のような内容である。

プロジェクトは、達成すべき目標をもった短期間の取り組み。ブログ記事では「ウェブデザインを完成させる」や「リサーチレポートを書く」なんかが例に挙がっていて、どれも締切と成果物が決まっていて、終わりがある。

エリアは、継続的に責任をもつ領域。「ブログを更新する」とか「プロダクトマネジメントをやる」とか。責任はあれども明確な終わりがなく、その領域が存在する限り、一定の基準を保ちながらずっと続けていく。

リソースは、興味があるトピックや、あとで読みたい情報。「グラフィックデザインを勉強したい」「フランス文学を読みたい」とか。必ず実行したり責任をもったりする必要はないけれど、知識としておさえておきたいとか、インスピレーションの源泉になっている。

アーカイブは、上の3つから外れたもの。完了したプロジェクト、もう関係ないエリア、関心のなくなったリソース。必要ないかもしれないが、いちおう記録や参考資料として残しておく場所だ。

このメソッドのよいところは、4つが実行可能性の高い順に並んでいること。「プロジェクト」は締切までにやるべきこと、「エリア」は継続的に責任をもつべきこと、「リソース」はいつか考えたいこと、「アーカイブ」は過去のこと、という感じ。

プロジェクトとエリアの分割

この分類のうち、とくに重要なものはプロジェクトとエリアの分割である。フォルテはブログや著書で、このことを繰り返し説いている。

説得的だなと思ったのは、フォルテがクライアントに自分のプロジェクトリストを見せてもらったときのエピソード。そこには「戦略企画」とか「採用」とか「イベント」とか書いてあり、どれも締切や目標が不明確だから「プロジェクト」じゃないだろ!っていうわけだ。それらは実際には「エリア」に属するものである。

この分類の失敗は2つの問題につながる。ひとつは、コミットメントを量的に把握できなくなること。たとえば「採用」はいつまでに何人すればいいかわからない。もうひとつは、モチベーションが続かなくなること。ただ「トピック」のように「エリア」を並べたところで、どれだけやっても終わらないわけだから、やる気がなくなる。

この論点に近いエピソードがもうひとつある。それは、人々の情報整理法は学校の科目のようだという指摘である。学校では数学や歴史といったトピックごとに分類するけれども、それを卒業してから用いてもあまりうまくいかないという。「マーケティング」や「心理学」といった「トピック」で頭を整理しても、それらが満たされる日は一生訪れないからだ。

学校の外では「トピック」よりも、達成したい結果にフォーカスしたほうがうまくいく。たとえば、「家族旅行の計画を立てる」とか「新しいプロダクトをリリースする」といった枠組みのほうがよい。会社でマーケティングを任されたとき、「トピック」として捉えて関連する情報を集めたり、「エリア」として捉えて責任を意識したりしても、なにも終わらない。締切と成果物のある「プロジェクト」に分解せよというわけだ。分解することで、小さな達成を生み出すことができる……。

4つの領域を整理することの価値

ざっとフォルテの議論を紹介した。以下にぼく自身の感想を書いて終える。

まず議論や枠組みとして価値があると感じている。各領域をそれぞれ魅力的に描いているところがフェアでいい。似たような自己啓発書やビジネス書では、ビジョンや世界観、責任、準備、情報収集といった領域と、プロジェクトやタスク、結果、実行といった領域をほとんど対立的に描いたり、両者の関係性についてあまりにもテキトーすぎたりするものが多いように思う。

たとえば、細かいタスクをいじってないで大きいビジョンを立てましょうとか、適切に情報を集めたら勝手に売上が上がりますとか。ひとつひとつの領域について上手にまとめている議論はあっても、それらの相互関係について整理できているものはあまりないのではないか。

次に、ぼくがPARAのなかでとくに有用だと感じている具体的なポイントを3-4個挙げる。

これらのTipsによって、どんないいことがあったか。まずなんでもかんでも頭のなかで勝手に焦り、雑にプロジェクト化することがなくなった。明確かつ客観的な締切が存在しないなら、どれだけ義務感に駆られてもそれは「エリア」に属する。慌てる必要はないのである。

あるいは、「やりたいこと」と、「やるべきこと」を上手に分割できるようにもなった。「やりたいこと」は、いったん「エリア」もしくは「リソース」に属することになるはずである。もちろん、そこに義務感(「やるべきこと」)が継続的に伴うのであれば「エリア」、そこまででもないなら「リソース」だ。

反対に(?)「やりたいこと」と「プロジェクト」の無関係さについても知見を得ることができた。上に書いたように、「やりたいこと」があっても、それが即座に実行可能性を高める(「プロジェクト」に分類する)ことにはつながらない。逆に「やりたいこと」と無関係であっても、「プロジェクト」に分類される情報がありえるのである。

これはちょっとヘンな言い方になっていると思うが、こういうことである──プロジェクトメンバーに理念や情熱がないとして、その人を「プロジェクト」に相応しいものではないと考える必要はない。実行可能性に寄与していればそれでいいのである。

燃えるようなモチベーションがなくても、「プロジェクト」にかかわっていい。自分はつねに燃えているから(それで「やるべきこと」が増えて困っていたのである)、これまであんまりわかっていなかったけど、この事実はとてもポジティブである。だって、いろいろな人と仲間になれる可能性があるから。